個性を伸ばす指導法

みなさん、こんにちは。

いつもコメントありがとうございます。

これからしばらくは自分だったり、アメリカでバスケットボールを体感した人達が感じているアメリカと日本の違いだったりを言葉にしていこうと思います。

今日のタイトルは”個性を伸ばす指導法”。

皆さんはジョン・ストックトンという選手をご存じでしょうか?

NBAのユタ・ジャズのポイントガードで、アシストも多く、最高のポイントガードとして称されることもあります。97年、98年には2年連続してNBAファイナルに進み、マイケル・ジョーダン率いるシカゴ・ブルズと死闘を演じました。

この選手、185cmで、ゴール下のレイアップは私が観た中では右手でしか打たなかったのです。ではゴール下のシュートが少ないのではないか、と思われる人がいるかも知れません。でもそうではなく、ユタ・ジャズはUCLAカットからのプレイが多く、彼が素早く飛びこんでペイントエリア内でシュートを打つ機会が本当に多かった。それでも左手でのシュートはたとえゴール下でも観たことが無いのです。

何を言いたいのかと言うと、左手で打てれば確かにレパートリーも増えるでしょう。でもストックトンがやっていたのは、左サイドからドライブする時、飛びこむ時などは”右手(=より確率が高い手)でシュートを打てる工夫”をしていたことなんです。例えばヘジテーションをして、リングの裏に周りこんでバックシュートをする。ディフェンダーがブロック出来る前にワンステップで飛んで、内側の手(=右手)でレイアップを打つ。そんなちょっとした工夫。これって”左手で打てば良し”という環境で教わった選手では生まれない動きだと思うんです。

アメリカは言わずと知れた結果主義です。

右手で打つとか、左手で打つとかが目的では無く、”シュートを入れること”が最大の目的とされます。そういう環境で育った中で、きっとストックトンは”左サイドからシュートを確率良く入れるには、自分にはこういう方法が一番適しているんだ”と身体で覚えていったのだと思うのです。

具体的にはこういうことです。

アメリカではピックアップゲームといって、近所にバスケットコートがあれば人さえいればすぐにプレイが出来る環境が整っています。だから、チームではいろいろドリルをしたり、がちがちに教えられていても、それらの技を”実戦で”試す場所が至るところにある。

それも年上や自分より上手い人相手に試す場所が存在するんです。

だから、アメリカ人のコーチなどは逆に自由を許さない、「この時はこう!」みたいながちがちの指導をする人も実際は多い。それでも、個性が伸びる場所があるからです。

日本の場合は、そういった場所が無い。

であれば、練習の中でそういったことを試す場、というのを作り出さなければならないと思うんです。みんながステップの反復練習をしたり、ドリルを懸命にやっています。でも、”自分なりにディフェンスとの間合いを覚える練習”って行っているチームはなかなか見かけない気がします。(正直、女子高校チャンピオンの山手高校など強いチームの練習では観たことあるのですが。。。)

後ろや横から追いかけて、レイアップにチャレンジするような1対1でも構わないし、1対2でもいいかも知れません。「この時はこう」って決めるのではなく、いくつかの選択肢を認めた中で”その選手独自”の解決方法を出すことを認めてあげる。身長差、スピード差、手の長さや間の取り方など、10人の選手がいれば10通りあると言っても過言ではない訳で。。。

もちろん、”左手のレイアップを教えるな”と極端なことを言っている訳ではなく、(コーチに言われた通り確率も考えず)左手で打って外して反省をしないような選手ではなく、シュートを入れるため、日々自分で考えて創意工夫するような選手が育つ環境を用意してあげる。

そんなことって大切かなってそう思います。

ちなみに神経系が発達するゴールデンエイジとされるのが10歳くらいまで。自分の指導の経験だと、中学生くらいまではコーディネーショントレーニングとか、左右両方の手を鍛えることってすごく効果的な気がします。この年代には、やはり両方の手を使うことを指導はした方が良いと思います。今回の投稿は右手だけ、とか左手だけ、とか得意なことだけやらせる、という意味ではありません。むしろ、左サイドからのレイアップでも、左手以外でも打つ方法がある。それでも有効なケースがあるんだよ、という”気付き”を与えてあげて欲しい。

そんな投稿です。