Rick Majerusのコーチング ~8つの目~

リック・マジェラスコーチの経歴などは簡単に前回まとめました。今回は彼の指導方法のご紹介です。

彼はディフェンスとリバウンドを強調するコーチで、オフェンスではモーション・オフェンスで有名です。残念ながら練習を見学させて頂いた際は、チーム事情でセットオフェンスしか使っていなかったので、モーションはビデオとアシスタントコーチからのレクチャーでしか説明を受けられませんでしたが、最近自分でクリニックなどでモーションを教えていて、彼の「原則」の意味・意図とその重要性が初めてわかったことなどがありました。

マジェラス・コーチはオフェンスでもディフェンスでもデータに基づいて指導するのと、ファンダメンタルに徹底的にこだわることで有名です。足のつま先の向き、スタンス、ピボットの仕方などをきめ細かく一つ一つ徹底して指導します。が、それでも練習の流れはスムーズで、次から次へ流れるように練習は進んでいきます。選手達は次から次へと飛ぶ指示や指摘という「言葉の嵐」の中で練習を続けていくようなイメージです。

彼の指導の特徴の一つは、アシスタントコーチの活用の仕方にあります。練習中、「二つの目よりも4つの目の方が良い」などと、日本語でも使う表現ですが、練習に参加している3人のアシスタントコーチ(もう一人試合分析専門のフィルム・コーディネーターもいます)にもはっきりとした役割を与えています。

例えば、ハーフコートの4対4や5対5をしている場合、ワンポゼッション終了ごとに、以下のような怒鳴り声が聞こえてきます。

コーチ・マジェラス: 「ボールが移動した時の反応が遅い!ジャンプトゥザボールをしっかりとしろ!あとは、ブロックアウトをしっかりすること!」

Aコーチ①: 「アンディ、リッチがオフェンスリバウンドに行かなかった!ニックはセイフティのポジションに入っていない!」

Aコーチ②: 「マイクとジョンがスクリーンコールをしていない!ロブもスイッチコールをしなかった!」

Aコーチ③: 「リッチがキャッチ&フェイスしなかった!ロブはショットが上がった際、しっかりとシュートチェックしていない!」

これらの言葉はおそらくプレイが終わって5秒以内に叫ばれます。特に修正するというよりは、「やるべきことをしていない人」を可能な限り、毎回洗い出す訳です。これがハーフコートの4対4や5対5をしている間中、毎ポゼッション続く訳です。

例えば、オフェンスとディフェンスで以下のような簡単なルールがあるとします。

<オフェンス>

・ ボールを受ける時はキャッチボイスを出し、ターゲットハンドを出す

・ ボールを持ったらキャッチ&フェイス

・ ショットが上がったら、ビッグマン3人はオフェンスリバウンド、ガード1人はセーフティ、もう一人はロングリバウンドに備える

<ディフェンス>

・ スクリーンコールの際は必ず互いの名前を呼び合い、どのようなスクリーンが起こっているか伝える。伝えられた者は返事をし、どうするか知らせる(例: 「ニック、ボールスクリーンが左から来てるぞ!」「OK、ファイトオーバーする!」など)

・ 必ずシュートチェックをする。

・ 5人全員が必ずブロックアウトする。

これらのルールが守られているかどうか、3人のアシスタントコーチが常にチェックする訳です。(「ディフェンスを観る人」、「リバウンドを観る人」、「オフェンスを観る人」と分けたり、「誰と誰を観る」という風に人で分けたりするようです)一人でもこれらのルールを徹底できていないプレイヤーがいたら、「ニック!〇〇ができてない!」と毎回叫ばれる、というような仕組みです。ヘッドコーチは全体を観ているようです。

このため、練習中はコーチ陣も汗をかきながら必死でプレイを観て、常に叫んでいるような状態ですし、緊張感が非常に高い練習になっています。「8つの目」を上手く使っている例です。

この記事を書いた人

東頭 俊典

東頭 俊典

バスケットボールコーチ。 北海道出身。
現在はアースフレンズ東京Zヘッドコーチ