いつもコメントありがとうございます。
コメントの中でリクエストの多かった、レッド・アワーバック・コーチ・シリーズの追記です。
さて、”気遣い”や”心遣い”を強調して書いたので、”厳しさ”とか”タフネス”が一部伝わっていなかったかもしれないので、今回は彼の”タフネス”について。
ジム・ラスカットオフという選手が膝の怪我をして手術をしたそうです。手術後、ラスカットオフは再発を恐れて、怪我前の思い切ったプレイが出来なくなったそうです。ある日、ラスカットオフを呼び出したアワーバック・コーチはフリースローラインに立ち、ラスカットオフをベースラインに立たせ、ひたすらルーズボールを取らせる練習を繰り返したそうです。「ボールが落ちる前に取れ!」といって、ボールを左右に投げるシンプルな練習ですが、彼が擦り傷で膝や肘の色が変わるまで続けた後、一言、「それに耐えれるなら、バスケくらいできる」と吐き捨てるように言ってその場を去ったとされます。常に選手に優しく、好かれることだけを望んでいるコーチでは無いのです。
この話には続きがあります。プロの選手ですから、プライドもあります。この仕打ちを受けたラスカットオフ選手は相当怒りをあらわにしたらしく、チームメイトに、「いつかあいつをぶっ殺してやる」と公言していたそうです。そして、彼の最後の試合後、彼はチームメイトに、「レッドと二人で話をして、あの一件(ルーズボールドリル)にケリをつけたいので、2分間彼と二人にしてほしい。」と頼んだそうです。
チームメイトは万が一のためにロッカールームの外に待機していました。妙な物音がしたので、中に入るとそこには、涙で顔を一杯にしたラスカットオフがいたそうです。彼はアワーバック・コーチへの感謝がつのるあまり涙が出たそうです。彼にはアワーバック・コーチの意図が伝わっていたようです。。。
と、こう書くと、では「私も心を鬼にしてドリルをやらせよう!」と若い純粋な読者ならなってしまうかも知れませんが、彼がすごいのは、こういう一見理不尽なことをしても、選手が理解する点です。これは彼がそういう説明を根ほり葉ほりしているからではありません。むしろ彼は人前では理不尽で傍若無人に振舞うタイプだったようです。ただ、その裏に緻密な計算が常にある。彼の下でプレイしたプレイヤーはみんなその意図(とその深さ)を理解していたと思うんです。だから、すごい。私はそう思います。
良い行いをしたり、指導をしても、逐一説明しないとわからないようでは本当の信頼関係も生まれませんし、このケースのように、「勇気を出せ」などと言われた方が、大人の選手にとってはプライドをそがれてしまいます。こういう無言のメッセージの方が結構利くのではないかと。。。
フィル・ジャクソン・コーチもそういう男気がある、というか、選手の扱いについては面白い逸話がたくさんあります。が。。。それはまた今度。
ということでレッド・アワーバック・コーチ続編でした。