オフェンスのまとめ② 〜モーションオフェンス〜

みなさん、こんにちは。

オフェンスのまとめ、第2弾。今日はアメリカから帰ってきて一番最初に勉強した「モーション・オフェンス」について、現段階での自分の考え方をまとめてみようと思います。

自分は常々、選手個々の判断で自由に相手の裏をかくようなオフェンスを理想と思っています。そうしたことから「モーション・オフェンス」を勉強するようになりました。2003年にコーチ留学に行った時も、モーション・オフェンスの大家の二人を訪ねました。ユタ大学(当時)の名将、故リック・マジェラスコーチとデューク大学のコーチKことマイク・シャシェフスキーコーチのもとで、モーション・オフェンスを学びました。

また幸運にも日本でこのモーション・オフェンスの第一人者である小野秀二さんの下で働ける機会も頂いたのです。偶然ですが、本当にありがたいことでした。

このオフェンスのメリットは主に以下の通りです。

・スペースが良い(良いスペーシングを強調する)

・ボールが動く(パッシングが強調される)

・動きがある(カッティング、スクリーンが自然発生する)

・スカウティングができない(決まった動きがないので、相手にスカウティングされにくい)

・ディフェンスに対応されにくい(ディフェンスに対応して動きが決まるので、相手がディフェンスを工夫しても対応できる。そのため、ディフェンス側に対応されることが少ない。)

・セットオフェンスからモーションオフェンスの移行が容易で、セットオフェンスを守られても対応できる。(選手がディフェンスを読めるようになる)

一方でデメリットは以下のように自分は考えています。

・習熟に時間がかかる。

・フィジカルなディフェンスをしてボールと人の動きを止められると機能しにくくなる。

・シュートを打つ人やパスを出す人をコントロールできない。そのため、試合終盤の重要な場面でエースがボールに絡まないこともありうる。オフェンスが次何をするか、誰が攻めてくるかわからない強みがあるが、コーチや選手も誰がシュートを打つことになるかわからないということが弱みにもなりうる。

モーション・オフェンスは5人全員が自分の役割をしっかりと理解し、お互いの得意なこと、不得意なことをしっかりと理解してプレーしなければ土壇場では機能しません。例えば、オープンだからと不得意なところからシュートを連発するような選手がいたら、相手の思う壺になってしまいます。逆にどんなに能力があっても、パスを出せない(出さない)選手がいると、1対1ばかりになってしまいます。

 

自分は大阪エヴェッサではモーションオフェンスを指導しませんでした。これには以下の理由があります。

①外国人選手がいること。

アメリカでも「モーション・オフェンス」という名前で教えているチームはありますが、前述のユタ大学やデューク大学、もしくはボビー・ナイトコーチがいた頃のテキサステック大学や、ブルース・ウィーバーコーチのカンザス州立大学は選手の判断に委ねている部分が大きく、本当の意味での「モーション・オフェンス」と言えます。(ただし、チームUSAを指導してからのデューク大学のオフェンスは大きく変わりました。モーションオフェンスの部分は少なくなった印象があります。)

これらのチーム以外は自分の知る限りでは、「パターンオフェンス」を「モーション・オフェンス」と呼んで教えています。この春NCAAを制したビラノバ大学などもモーション・オフェンスと言いつつも、実際はパターンオフェンス、一種のシステムオフェンスです。

高校でも中学でもセットプレーやシステム、パターンオフェンスでの指導が多いアメリカの選手に本家本元のモーションオフェンスを指導するのは難しい、と自分は感じました。また大阪での1年目は外国籍選手合流から準備期間が開幕まで3週間しかなかったこともモーションオフェンスを断念した理由の一つでした。

②日本人との連携やコミュニケーションが難しいこと。

モーションオフェンスを習熟させるためには選手同士でのコミュニケーションが重要となってきます。この時、どうチームメイトに動いて欲しかったのか、自分は何をしたかったのか、など毎回の練習で選手同士で詰めていくことが理想となります。そのため、数年単位で同じチームでやる、という前提でもない限り、本当に強いチームを作るのは難しいと判断しました。

 

一方でモーションオフェンスは習熟が難しいと言っても、バスケットボールで一番大切な相手との駆け引きやスペーシングを教えることができますし、実際、導入には1日しかかかりません。なので今でも中学〜大学生のチームを教える時には教えますし、このオフェンスはオススメです。

WJBLの女子のチームなら合う気がします。コミュニケーションがしっかり取れますし、パスがうまい選手が多いので、良い形になると思います。一方で外国籍選手が複数いる男子のプロチームなどでは、自分は教えない道を選ぶ気が今のところはしています。チーム作りの時間がないですし、もう少し違うオフェンスを今は目指す気がします。

それがどんなオフェンスなのかはまた今度。。。

今回はあくまで自分の意見であって、モーション・オフェンスは良いオフェンスですし、外国籍選手がいても指導はもちろん可能です。今の自分は採用するとしたらWJBLのチームだったり、学生などに限られる、と言っているだけです。

ではどんなオフェンスが良いのか?

これはまた前回記したペイント内の得点目標などにも絡めて話をしていきたいと思います。