最近、「オフショット」の写真が撮れていないので、
今日も投稿します。
前回はResiliencyの話をしましたが、「今回は選手のありのままの姿を出す」、そんなコーチングに長けているフィル・ジャクソン・コーチの話をしたいと思います。
御存知、マイケル・ジョーダンとシカゴ・ブルズを6回の優勝に導き、レイカーズを4回優勝に導いた名将。レッド・アワーバック・コーチが持っていた9回の優勝という記録を塗り替えてしまいました。
彼は「心理学者」とか「禅マスター」とか呼ばれ、選手の心理的な部分や相手チームのコーチや選手も心理的に挑発するなど、一風変わったコーチだというのは御存知の通りです。基本に細かい一方で、デニス・ロッドマンやロン・アーテストなど他チームが「問題児」として扱えなかった選手のコーチングも上手く、スーパースターのいるチームを上手くまとめあげるのが得意です。
彼は自分にとって、一番の目標のコーチで、書きたいことはやまほどありますが、今回は「選手らしさ」を引き出すコーチングについて考えてみたいと思います。
マイケル・ジョーダンがシカゴ・ブルズとして最後に戦った1998年のNBAプレイオフ・ファイナル、ユタ・ジャズとの試合のラストプレイはあまりにも有名ですが、これはこのようなシチュエーションでした。
残り41.9秒でユタの3点リードの場面。
ジョーダンはボールをもらい、右サイドをドライブします。このプレイでは”教科書通り”ファウルをもらえれば、3点プレイにもなる可能性があり、ジャンプショットよりはドライブが好ましい選択です。これを決めて1点差。
そのままかえってきて、ロッドマンを押し合いをしていたカール・マローンが得意のリンクに向かって左サイドでボールを受けた際、バランスを崩し、コート全体を観られないのを見計らって後ろからスティールに行き、見事にスティールに成功します。
この語、みなさん御存知のあのジャンプ・シュートを沈める訳ですが、この際も、ショットクロックがもうなくなっていたのに関わらず、残り12秒からアタックを開始し、ショットを決めた時には残り5.2秒でした。同点のシチュエーションなら、ショットで終わりたい所ですが、1点負けているこの場面では、オフェンスリバウンドのチャンスを残しておきたいシチュエーションです。これも”教科書”通りのプレイで見事に逆転勝ち。
この試合の終了後、フィル・ジャクソン・コーチはマイケル・ジョーダンをハグしながら、「That was beautiful」と言いますが、あのショットを決めたことだけではなく、この41.9秒の判断全てのことを言っていたのだと思うのです。コーチとしては教科書通り、まさしくバスケットボールはこのようにプレイされるべきだ、という形どおりのプレイでした。最後のショットだけが注目されがちですが、この最後の41.9秒は史上最高の選手と呼ばれるに相応しい、素晴らしいものだった。。。
ちなみにジョーダンは著書で、この時の状況をつぶさに細かく解説しています。最後のショットも前年にダブルチームに来たストックトンのマークマンだったスティーブ・カーがゲーム・ウィニング・ショットを決めているので、今回は来ないだろうと、ストックトンの位置を確認し、彼の心理状況まで読み切って判断したプレイだったそうです。
最後のフォロースルーも、マークのブライアン・ラッセルを交わした際、少し後ろにバランスを崩したため、シュートが短くなる傾向がある自分は少し長めにフォロースルーすることによって、ショートにならないようにした、など細かい所まで気を使ったショットでした。
うーん、すごい。で、何が言いたいかというと、結局はこのプレイを演出したのはフィル・ジャクソンなんです。この状況でブルズがボールをスティールした後、NBAでタイム・アウトを取らないのはおそらくフィル・ジャクソンだけでしょう。彼は「チームの雰囲気が良く、プレイを止めて、相手にディフェンスをセットアップさせるよりもそのままプレイさせた方が良いと判断した」と後に語っています。
これは長くなってきたので続編必要ですね。。。
とりあえずこの試合のプレイ、観てみて下さい。