さて、前回はトライアングル・オフェンスの簡単な説明でしたが、今回はその特徴について簡単にまとめてみようと思います。あくまで個人的な見解ですが、このオフェンスの長所を以下の5つに絞ってみました。
1.ボールが動く。
2.スペースが崩れない。
3.継続性がある。
4.コート上の5人全員が得点機会を持てる。
5.ディフェンスの裏をかける。
ひとつひとつ詳しく考察してみたいと思います。
1.ボールが動く:
このオフェンスの約束の一つは、「ボールマンが常に他の4人にパスが出来るオプションを持っていること」です。ボールマン以外の4人のプレイヤーがボールを受けるオプションを常に持っているということは、ディフェンスはボールマン以外についている4人全員がしっかりとディフェンスをしなければなりません。通常のオフェンスでは、ハーフコートでパスを出す所が1~2か所と限定されることもあります。4人のプレイヤーが常にレシーバーとなることは、ディフェンスをする上では非常にやっかいなこととなります。レシーバーへのプレッシャーをかけなければなりませんし、また同時にヘルプディフェンスへの移行も通常以上にスムーズに行わなければなりません。また、パスが多くなるため、ディフェンスも常にポジション移動を行わなければならなくなり、ディフェンス面でのミスが起こる可能性も高くなります。
2.スペースが崩れない
「ボールを持たない4人が常にレシーバーになる」となると、まず心配なのがスペーシングですが、トライアングル・オフェンスでは、一人一人がどのポジションに立つかを決められているので、スペーシングが崩れることはそうはありません。またパスのオプションが多い(ボールを持たない4人全員がレシーバーになる)ため、ベスト・プレイヤーがダブルチームされた場合の対処もスムーズに行えます。
3.継続性がある。
トライアングル・オフェンスでは、ボールマンがどのようなプレイを選択(どこにパスをするか、どちらに向かってドリブルするか)で次に繋がるプレイが変わっていきます。プレイはそこからまた次の段階に入っていき続いていく形になります。また、プレイが崩れてしまっても、またボールサイドにトライアングルさえ作ってしまえば、すぐに元のプレイに戻ることが出来ます。そのため、オフェンスが崩れても立て直しやすく、継続性に優れたオフェンスになっています。
4.コート上の5人全員が得点機会を持てる。
トライアングル・オフェンスでは、コート上の5人全員に得点できる機会があります。5人全員がポジションを入れ替えることが出来ますし、常に動きのあるオフェンスなので、ディフェンスが崩れた所から随時得点を狙っていくことが出来ます。
5.ディフェンスの裏をかける。
トライアングル・オフェンスを作り出したと言われるテックス・ウィンター・コーチは、「トライアングル・オフェンスはオフェンスで考えうる全ての動きを含んだオフェンスであり、全てのディフェンスに対応できる」と言い切っています。具体的には、コート上の5人のプレイヤー一人一人が、自分のマークマンの守り方やチームメイトがどのように守られているかを観て、相手の裏をかくような選択肢を常に持っています。
例えば、プレイヤー②がパスをしようとしている、トップのプレイヤー③と、コーナーにいるプレイヤー①がディナイされているシチュエーションを観てみましょう。
ウィング②がボールを保持。コーナーの①とトップの③がディナイされている
プレイヤー④がハイポストにフラッシュするか、ポストにいるプレイヤー⑤にパスを入れて、バックドアプレイを狙うことが出来ます。(”バックドアプレイ”というのは、単なるバックカットではなく、ディナイされている選手の背後の選手にパスを入れ、”後ろのドアから(ディナイされている選手を)逃がすプレイ”を意味するそうです)
ハイポストにフラッシュした④にパスを入れ、④と③の”バックドアプレイ”が成立
ポストの⑤にパスを入れ、ディナイされていたコーナーの①がカット。こちらも”バックドア”プレイの一例。
他にも、ボールにプレッシャーがかかっている時のオプション、ポストがフロントされている時のオプションなど、いろいろなディフェンスに対する対処法があらかじめある程度整理されており、ディフェンスは非常に守るのが困難となるのです。
このように相手ディフェンスに対して、チーム一丸で対応できる(5.ディフェンスの裏をかける)結果、いたるところに得点チャンスが生まれるのです(4.コート上の5人全員が得点機会を持てる)。