トライアングル・オフェンス ~その3:複雑なオフェンス?~

よく「トライアングル・オフェンスは指導するのが困難だ」と言われています。確かにタイミングが難しく、オプションも相当数あるので、簡単である、とは言い難いです。事実、私も非常に複雑なオフェンスなのだ、という印象を持っていました。

この7月に、昨季NBAで優勝したロスアンジェルス・レイカーズのジム・クレモンズ・アシスタント・コーチが来日され、トライアングル・オフェンスを指導されました。この時は幸運にも通訳という形でお手伝いさせて頂いたのですが、クレモンズ・コーチはこの日来ていた大学の女子チームに、1時間でトライアングル・オフェンスを教えきってしまいました。もちろん、この大学のチームもクレモンズ・コーチが来られる、ということで事前に少し練習はしていたようです。それでも、通訳を介してたったの一時間で選手がタイミングとディフェンスの読み方もしっかりと覚えて、楽しそうにプレイ出来るようにしてしまう、とは思いもよりませんでした。

実はこのクリニックに参加する前は、「大学生などある程度しっかりした基本を持っている選手達でも、顔をしかめて難しそうに考えながらプレイするようなオフェンスなのかなあ」、というイメージを勝手に持っていたのです。ですが、この大学の選手達は笑顔を見せながら楽しそうに黙々とプレイしていたんですね。まるで、「こうすればいいんだ!」とプレイを重ねる度に新たな発見があるかのように、どんどん上手くなっていったんです。

クレモンズ・コーチの指導力の高さももちろんあると思います(この点についてはまた後ほど)。ですが、思っているほどにトライアングル・オフェンスは「複雑怪奇」なオフェンスではなく、むしろバスケットボールの原理原則をシンプルにしたオフェンスなのだと学ばせてもらいました。嬉しそうにプレイする選手の顔が何よりも忘れられない一日でした。