日本とアメリカの違い② ~パス編~

日本とアメリカの違い②

スラムダンク奨学金の矢代くんに伝えていることシリーズ続編です。

1.ファンダメンタル・スキル全般

パス編です。

海外との違いは「体格」と「運動能力」です。では、体格が大きく、運動能力が高いとどんなことが起こるのでしょう?一つはコートが”狭く”なります。170cmの平均的なスピードの選手に比べて、2mで手も長く100mを11秒くらいで走る選手にとっての15m×28mのバスケットボールコートは、”狭く”なるはずです。実際にプレイでどのような影響があるかというと、身長が高く(=手が長い)、運動能力の高い選手はカバーできるエリアが大きくなる、ということです。

たとえば、ワンパス・アウェイの選手をディフェンスしているとしましょう。170cmの人が取るディナイ・ポジションよりも、2mの人はマークマンから離れてついていても、パスが投げられてから反応してもスティールすることが出来ます(手が長く、スピードもあるため)。

こういった選手を相手にプレイして、パスをする場合、2つのことが求められます。

① パスのスピードを速くする。

これは説明の必要は無いかも知れませんが、相手が速く、手も長ければ、それだけパスを出してからレシーバーへ到着するまでの時間を短縮する必要があります。パスのスピードは、日本国内でプレイする時よりも数段速くしなければ、海外では通らなくなります。

② パスまでのスピードを速くする。

これは前回のドリブルと同じ要領です。パスモーションを、1(構える)、2(フリーフットをパスする方向に踏み出す)、3(パスを出す)というリズムでは、簡単に取られてしまいます。ボールを持った瞬間にパスを出せる、くらいのイメージでなければなりません。初めて外国人とプレイする際、多くの日本人選手が困るのが、彼らのパスをキャッチすることです。パスのスピードが速いのに加えて、パスまでの動きが速く、タイミングが取れないのです。パスが来るとわかっていても、上記の1,2,3のうち、2の動きと、速い選手は3の動きも無いので、ドリブルを止めたり、パスが来ると思った時にはターゲットハンドを構えていないとボールをキャッチできなくなります。

① パスのスピードが速く、② パスまでのスピードが速いと、メリットは他にもあります。それは「ぎりぎりまでディフェンスを観れるようになる」ということです。今まで、1,2、3のリズムで構えて、比較的スローなパスを出していたのを、”1”のリズム(構えた瞬間パスが飛んでいる感覚)で、スピードのあるパスを出せるようになれば、それだけ”観る”時間を長く保てるようになります。ディフェンダーの動きをぎりぎりまで観てからパスをするかどうかの判断をすることが出来るようになります。

一般的にパスを片手で投げたり(ワンハンド・プッシュパスとか)、「大きい相手をよけてパスをしよう」ということが大切とされています。これはファンダメンタルとして当然必要なことです。ですが、海外の小柄な選手と対戦した時に一番感じたのが、彼らのパスのスピードとパスまでの速さでした(これが前回お話した、”横<種類>”の広がりと”縦<質>”の掘り下げの違いの例です)。チェストパス一つとっても、パスのスピード、パスまでのスピードが格段に違う。チェストパスで床と平行の弾道でターゲットハンドに寸分の狂いもなくパスを通せる選手がごろごろいます。

アメリカ人の白人で178cmとかでガードをやっている選手で現在スペインなどの強豪リーグでプレイしている選手と一緒にワークアウトをしたことがありますが、逆にワンハンド・プッシュ・パスなど使いません。”ぶれるからかえって遅くなるし、正確に投げられない上に、ディフェンスの反応を観て、止めようと思っても止められない”と言うのです。

体格的に変わらないのならば、外国人が持っていない技術を身につけることだけに専念するのではなく、彼らと同じスキル・レベルに到達することが先なのではないか、と。

今回はパス編でしたが、これも「体格」「運動能力」の違いから生じる「ファンダメンタルの質」の違いです。これも体格や運動能力の違いに関係なく、日本人にも身につけることのできる”スキル”だと思います。