日本とアメリカの違い ~スラムダンク奨学金~

世界を相手にしている中村俊輔選手のことを書いて、

やはり書かなくてはならないと思い、今回の投稿をします。

かなり前の話になりますが、スラムダンク奨学金3期生の矢代くんのワークアウトをしました。

シューティングと1ON1をメインに約2時間、ハードなワークアウトでした。身体も強く、ボールハンドリングも良く、一生懸命頑張るタイプのスマートなプレイヤーです。頑張ってほしい!!!

ただアメリカに行ってバスケットの世界で生き残るには、まだまだまだまだ学ばなければならないことがたくさんあります。これは自分が高校卒業後、大学に渡って苦労した部分でもあるし、アメリカでプレイした日本人と話すと必ず話題にあがる部分でもあります。

矢代くんに教えたこと、これから教えることは以下になります。

1. シュート、パス、ドリブルといったファンダメンタル・スキル全般の向上

2. アメリカの競争を勝ち残るためのメンタリティ、メンタル・タフネス

3. PGとしてゲームをコントロールするためのバスケットボールIQの向上

時間がある時は極力協力しようと思っていますが、具体的にどんなことを教えているのか、簡単にご紹介していこうと思います。

1.ファンダメンタル・スキル全般の向上

海外との「体格」・「運動能力」の差はいまさら説明の必要も無いと思います。ただ、あまり実感されていないのが、「体格」・「運動能力」の差から生じる「ファンダメンタルの質の差」です。これは日本のバスケットボールや指導を批判する、とかそういう意図では無く、あくまでアメリカ人の中でプレイした経験談と、同じようにアメリカでバスケットボールをプレイしている、もしくはしたことのある人達との会話の中で出た、私達個人の”意見”、“感想”なので、ご理解頂けたら幸いです。

今回はドリブルについて:

① ボールコントロール

日本人はドリブルが弱い、と言われて久しいですが、ここがガードにとっては一番の問題になると思います。皆さん御存知のようにドリブルが強い、ということはボールが手についている時間が長くなるため(床から跳ね返って手に戻る時間が短くなる)、ボールコントロールが向上します。

② 当たり強さ

ドリブルが強いとドライブの際、相手にぶつかってバランスを崩したりしずらくなる、という効力もあります。日本ではファウルと判定される当たりも、アメリカではファウルにならないことが多く、逆に「筋トレしないおまえが悪い」とでも言わんばかりにゲームは進んでいきます。床にたたきつけるようなドリブルをすることで、体幹にも自然と力が入り(棒立ちで手の力だけで強いドリブルするのは意外に苦しいし、自分のバランスも保てない)、ドライブが強くなる効果があります。

③ 相手との駆け引き・間の作り方

”Creating Separation”と言いますが、ディフェンダーとの”間”を作るのにも強いドリブルは欠かせません。日本に戻って来て一番驚いたのがPull Up Jumperを出来る選手が少ない、ということです。Pull Up Jumperというのは、ドリブルからのジャンプシュートです。この鋭さが海外のプレイヤーと日本人では随分違います。例えば、1ON1でディフェンスをしているとしましょう。相手が右に強いドリブルで攻めてきます。この時、その鋭さにディフェンスがクロスステップを踏んだり、通常のスライドステップを踏んでいても、後ろ脚に重心がかかっていると、もう次の瞬間にはシュートが打たれている感覚です。これがPull Up Jumperです。ですが、ドリブルが弱いとワンドリブルだけでは振り切ることができません。昔トヨタにいた、Louis Campbellという選手が得意なプレイでした。見た目にはただのワンドリブル・ジャンプシュートに見えるかも知れませんが、ディフェンスをしている選手にはスピードの違いがわかるはずです。少しでも最初のステップを後ろに踏んだりしてしまうと、もうシュートが打たれている、言葉にするとそんな感覚でしょうか?

JBLだと栃木の川村選手や日立の菅選手が良いPull Up Jumperをしています。

これらは、「運動能力」や「体格」と一見関係の無い、「スキル」の部分に見えるのですが、実は綿密に関係しています。相手の当たりが強いと弱いドリブルでは全くボールをコントロール出来ませんし(ドリブルしている時に、自分より50kg重い相手にショルダー・チャージを受けているのを想像してみて下さい。ドライブはこちらも相手に向かっていっているのでそれぐらいの衝撃があるかも知れません。ドリブルが弱いとたちまちボールを失ってしまいます。)、運動能力が高く、相手がジャンプしたらすぐにブロックされるような場合は、ドリブルからジャンプシュートに一瞬で移行出来なければなりません。ですから、ドリブル一つとってもその鋭さが全然変わってくるのです。

ですがこれが日本人だから出来ないのか、というとそんなことは決してなく、練習すれば必ず出来るようになります。現に最近ではジュニア・オールスターなどで中学生を観ると随分ドリブルが強い選手がいますし、現在栃木の並里選手なども高校の時からかなり強いドリブルをついていました。今アメリカのポートランド大学で活躍している伊藤大司選手はPull Up Jumperも完璧にこなせます。これは人種の関係が無いスキルなんです。

一般に「海外に対抗する」という話題になると、海外チームと違うことをする、とか”横”の広がりの話、つまりテクニックの種類の多さなどの話になります。これはこれで非常に大切なのは疑問の余地はありません。同じことをしていては勝てる訳がないからです。ですが、その一方でどんなに種類を多く身につけても、”縦”、つまり質を掘り下げて行かなければいけない、と思うのです。ドリブル一つとっても、強さが違うのであれば、横をどんなに広げても、最後決めきれない、ということになるのではないでしょうか?また、ドリブルが弱いのは、筋力が弱い、ということではないのです。現に日本人で出来る人がいますから。。。川村選手も菅選手も筋肉隆々どころか、かえって細いタイプの選手ですし。。。

体格・運動能力が高い人とやることが少ない分、必要性が少ないから、これらのスキルが成長しない、と私は思うんですね。ドライブしてバランスを崩しても、ファウルを吹いてもらえればドリブルを強くする必要はありませんし、相手がそこまで身体的に強くなければ、身体接触しても、身体がぶれないため、ドリブルが弱くてもぶれることはありません。一瞬で相手を振り切れなくても、ブロックショットされることも無ければ、特にドリブルを強くする”必要性”は生まれて来ません。

あくまで意見ですが、ファンダメンタルの”質”の向上はこれから欠かせなくなるのはないかと。そんな風に考えています。