みなさん、こんにちは。
先日チームの公式ホームページから出させていただいた奇跡の編成と題した記事。
今回は、この中で触れている三本柱の中の『新戦力』についての話をします。
東京Zの『新戦力』
なんと言ってもまずは発表がありましたケイン・ロバーツ・ジュニア選手!
どんな選手かわからない人が多いと思います。そんな方はぜひ5月に彼が特集されたこちらの記事をご覧ください。
目標はNCAAディビジョン1でプレーすること。異なる道のりを歩みながら前進し続けるケイン・ロバーツhttps://news.yahoo.co.jp/byline/takashiaoki/20200517-00177460/
彼はまだ18歳になりたてですが、既にインターナショナルスクールを卒業、Bリーグ史上最年少でフルシーズン契約をした選手になります。(特別指定選手で彼より若い選手は2名いましたが、両名共短期間の滞在でフルシーズンとしては初めてになります)
世界で見る育成世代
これはFIBAでも日本バスケットボール協会でも認識されていることなのですが、日本のBリーグ、また日本代表というのは世界で一番平均年齢が高く、若い選手がプレーできていないというデータがつい最近出ているそうです。
ヨーロッパではシステム上、既に16歳〜18歳の選手が何人もユーロリーグやユーロカップのレベルでプレーをしています。サッカーで言えば現在19歳の久保健英選手がレアル・マドリードからユーロカップにも出られないレベルのマジョルカというチームに期限つき移籍をしましたが、そちらでプレーをしてしっかりとプレータイムとプレー経験を得て、成長の糧とする、というシステムが確立している。これまでのBリーグでは大学を卒業する4年生がインカレ後に特別指定選手として参加したり、昨年の河村勇輝選手のように短期でリーグを経験するケースはあっても、シーズン最初からプロチームで一年を過ごす、ということはありませんでした。更に言うと、ケインはそこから『アメリカの大学に挑戦する』という、まだBリーグでは誰もしていないことをやろうとしています。これが可能かはリーグやNCAAにもチームが懸命に確認し、色々な課題を明確にしつつ、ご両親とも相談をして決断した、という形になります。
最近はU18のユースチームというのがバスケットボール界にもできてきましたが、今後サッカーと同じように高校とU18のユースチームが連携していい選手を育てていくことになるようです。例えば本田圭佑選手のように高校出身で良い選手もいれば、長友選手のように大学を経て成長して世界へはばたいていく選手もいます。もちろんプロのユースチームを経てプロや日本代表に選ばれた選手もたくさんいます。どれか一つが正しいというのではなくて、いろんな選択肢があるということが選手にとっては良い環境なのではないでしょうか?選手によって合う合わないとかもあるでしょうし、バスケットボール界も様々な選択肢が増えて行くことに可能性を感じています。
以前、東京Zが世界チャレンジの一つとして送り出してくれてイタリアで勉強させていただいた時(当時のコラム: https://eftokyo-z.jp/column/171121-01/ )に、当時現地で二部三部にいるチームを見て回っていたんですが、その時にユーロリーグチームでもあるAX アルマーニ・エクスチェンジ・ミランというチームにも行ってきました。今年かの有名なメッシーナコーチが行って脚光をあびたチームです。ミランでポイントガードの3番手を務めていた当時19歳の選手が、自分が主に練習を見学していた2部のオーロラ・デジオに来た理由を聞きました。一部のチームにいた時も全試合でなくとも15分くらいはプレータイムをもらっていた選手なんですが、彼はなぜオーロラ・デジオに来たのかというと、彼の年齢だと、そろそろ二部三部だとしてもしっかりプレータイムをもらえる場所でやって、そこで20~30分試合に出て、成果を残せなければバスケットボールは見切りをつけて大学に行くんだと。日本とは考え方が逆で大学を出てからプロにトライする。海外では16歳以降に一旦プロに挑戦し、芽が出なければ諦めて進学する。これは日本ではどちらかと言うと女子の仕組みに近いかもしれません。Wリーグでキャリアを終えた後に大学に進学するという選手も、まだ少ないですが稀にいます。
ケイン選手の場合
ケイン選手の場合は日本で生まれ育っていながらインターナショナルスクールで活躍していたので、日本の王道のスカウティングに触れていないために、あまり知名度がありません。ただ実力で言うとかなり高いレベルにいるというのは見ていただければ分かると思いますし、海外のキャンプでの評価も高いです。それこそ冨永選手がとか、そういう選手しか選ばれないようなNBA ウィザードボーダーズ等にも選ばれて高い評価を得ている選手です。
ケイン選手はまだ体はできていませんが、海外では16歳頃が骨格的な成長が終わって筋肉がついてくる段階と言われていて、成人と同じトレーニングを開始することができます。すなわち成人と同じレベルでプレーをしても、怪我のリスクは低くなってくるということです。身体としては大人の男性に近づいていく段階だと考えられていて、そこから言うと18歳というのは世界的には早い方ではないです。ヨーロッパで言うとルカ・ドンチッチ選手は16歳、リッキー・ルビオ選手は14歳でトップリーグデビューをしています。想像してみてください、八村選手、馬場選手、河村選手などがもし15,6歳頃からBリーグでプレーしていたら、どうなっていたか?そしてその後にアメリカの大学に挑戦、ということも出来る、という道を創り出すことが出来たら。。。想像しただけでもワクワクしますよね?
そういう新しい道を創ろう、世界に近づこう、Bリーグが特別指定の短期的なものではなく、若い選手にもフルシーズン戦えるチャンスを広げる最初のケースを創ろう、という想いでZは今回の契約に踏み切りました。
ケイン選手の加入・活躍が日本の中で良い足跡を残してくれるといいなと思っています。特にZは二部のチームなので、海外のようにしっかりプレータイムも与えて育てなければいけないという使命もあります。特別指定契約もそうですが、彼のような選手が今もしB1にいってしまうと、なかなかプレータイムがもらえないということが起きると思います。若いうちにいかにプレータイムがもらえるかということがどれだけ大事か、若い選手には是非考えてもらいたいです。先ほどのアルマーニの選手の例ではありませんが、せっかくレベルが高くていいチームに行っても試合にほとんど出られないとなると、シーズン中試合が水土日とつまっていたりして60試合もある中では、練習回数がすごく少ないんです。どんなに戦術的なことが学べたり(本来はB1B2の中で差があるべきではないのですが。。。)高いレベルで一緒に練習できると言っても、試合に出れなければ、競争力の高い練習らしい練習はほとんどできません。今後の特別指定候補など若い選手がどこを進路に選択するべきかというところで、一石投じられる話題なのかなと思っています。
ケイン・ロバーツ選手、是非期待をして応援してあげてください!宜しくお願いします!
(東頭コーチ談 スタッフ書)